この国で有名な話というと、先祖代々から伝わる王族と専任騎士シュバリエの恋物語でしょうか。
現女王陛下エリザベート様とシュバリエのイオリ殿。二人の仲を認めようとしない方々は少なくない数が存在しています。が、これはイオリ殿が異国人であるという実態が原因なだけであって、女王とシュバリエが結ばれること自体は何ら問題はありませんのです。
というのも、過去を振り返ってみると七割がたが結ばれています。
これはシュバリエ=大貴族で実力者であり、女王と親密な関係にある方が選ばれるという暗黙の了解があったからこそなのですが。
その法則を少しばかり破ろうと単身努力をしている陛下(六歳)も、だいぶ国民に浸透してきましたね。
「で、イオリ殿。実際のところどうなのですか」
「えー……」
陛下の執務のお時間。
たまたま暇をしていたイオリ殿を捕まえてみました。
いえ気になっていたのですよ。彼の本心。この前、陛下を焚きつけてしまった負い目も若干ありますが……。
イオリ・シズカ。東方にある異国出身。16歳という若さながら専任騎士シュバリエに選ばれるほどの実力者。ちなみに特技と好きなことは黙って受け流すこと。
……そう、彼の本心というのがイマイチわからないんですよ。
陛下に気がないならば陛下が可哀想ですし、あればあればでロリコン扱いされるのは目に見えているからか、基本的に受け流してばかり。
『現シュバリエは陛下のお人形』だなんて噂も有名です。
「ノーコメント、じゃダメですか?」
「では今の現状がいいのか悪いのかは?」
「うーん……悪くはない、かな」
わからないですね……。
まぁ私が彼の立場であったら『十歳年下(まだ幼児)のこと好きなんですか?』って聞かれても困りますね……。
このあたりでやめましょうか。
「あ、でも――」
「え?」
「この国は、本当に好きです。人も環境も」
それは、当然ですね。
「陛下が頑張っていらっしゃいますからね」
「あああぁああ……イオリぃいいい…………」
「陛下! 手が止まっていらっしゃいますぞ! あと40枚ほど捺印していただかなければいけない書類がありますし、そのあとかの条例の件で会議が――」
「わたしまだコドモだもの! あそびたいいいい!!」
「仕事が終われば遊んでいただいて結構でありますぞ!」
「いまあそびたいのよぉ! イオリたすけてぇええ!!」
が、頑張っていらっしゃいます……?