09.真夜中の祭

 聖夜祭当日の夜でございます。
 大きな催し物はすべて終了し、残すは城の大広間を使った立食パーティーのみです。
 この日のためにシェフが最高級の食材を揃え、三日ほど前から下準備をし、朝から晩まで不休で作り続けた豪勢な料理の数々。
 これを味わなければ年を越せぬ、と声を大にして叫んでいた宰相がどこかにいましたが……まぁ、それはさておき。

「……………………ぅぅぅ」

 陛下、自業自得でございます。
 イオリ殿の結果は準決勝で負けてしまわれたので三位ということになりました。
 一位は騎士団長でしたけど。というか、今年騎士隊の出場率が恐ろしく多かったらしいです。
 原因は……言わずもがな。陛下がイオリ殿を勝手にエントリーさせたせいで、対抗心丸出し単純な奴らが揃いも揃ってエントリーしたんですよ。
「残念でしたね、陛下。これでプレゼントは渡せませんよ」
「うわぁぁああんん!!」
 だいたい、あんな嘘をつかれるのが悪いんですよ。
 いくらイオリ殿が専任騎士になれるだけの実力があるからって、優勝までできるほどではまだないんですから。
「……せっかく、フェティダからもらったのに」
 陛下が渡そうと思ってたのは、以前フェティダ国からお礼としていただいた物のひとつ。美しいバラが彫られたペアリングです。
 お揃いにしたかったんですね……。
「こ、こうなったら……女王ケンゲンでムリヤリ受けとらせるわ!」
「陛下、それはもはやプレゼントではありません」
 もうちょっといい感じに考えられないものですか――――って、あら?

「陛下、お待たせいたしました」
「い、イオリ……!」

 どうやら主役がご登場のようです。
「申し訳ありません。せっかく陛下が推薦してくださったのに、優勝できなくて」
「……ぅっ」
 あーあ。どうするんですか、これ。

「代わり……と言ってはいけないのですが」

 そっ、とイオリ殿から差し出されたのは――リボンですね。
 バラの刺繍がしてあって、陛下の髪によく似合いそう。

「来年こそは、あなた様に勝利を捧げます」
「イオリ――!! ええ、まっているわ! ……そ、そのときまでプレゼントはおあずけよ」
「はい。楽しみに待っています」

 なんかいい話になりましたね……。
 さて、陛下がペアリングを渡せるのはいつ頃なのでしょうか。