ふぅ、今日は随分と冷え込んでおりますね。
陛下が風邪をひかないよう、城は最新の暖房器具が設置されておりますが、これだけ寒いと足りないかもしれませんね……。
この前なんて「執務室にコタツを設置させるわ!」などと仰っておりましたし。
ま、イオリ殿への好感度アップというのもありましたけれど。
……あら、あんな柱のそばで黄昏ているのは陛下ではありませんか。
今度は何をしたんですか?
「……ぐすっ」
え、泣いていらっしゃる?
リシュリュー閣下に婚約でも押し付けられたとか……?
でも少し前の謹慎で頭は冷えたみたいですけど。
「陛下? どうなさったのですか?」
「う、うわぁぁああん!! アイリーン……どうしよぉ!」
こ、これはただ事ではないですね!
ひとまず何があったのか聞き出さなくては。
で、結局……。
「イオリ殿の誕生日ですか……」
呆れたふうに言ってしまうのをお許し下さい。
でも、あれだけ泣いてて理由がそれって……。
「だ、だってー! 『たん生日プレゼントがほしかったら、セイヤサイでゆうしょうしてみなさい』ってじょうだんで言ったのに――しんじちゃったんだもん!」
聖夜祭というのはこの国の年末に開かれる、国を挙げた忘年会みたいなものです。
今年はちょうどイオリ殿の誕生日とかぶっていましたね。
で、その祭りでは出し物として腕を競い合うトーナメントが開かれるのですが……それにイオリ殿を出場させた、と。
――なんだか頭痛くなってきました。
一般兵は多数参加しますが、近衛兵――しかも専任騎士(シュバリエ)が出るなんて前代未聞ですよ。
「うわーん、イオリのバカ! しょうじきものー!」
「陛下が嘘をついたのがいけないんですよ」
はぁ……聖夜祭、どうなるんでしょう。