08.正直と嘘吐き

 ふぅ、今日は随分と冷え込んでおりますね。
 陛下が風邪をひかないよう、城は最新の暖房器具が設置されておりますが、これだけ寒いと足りないかもしれませんね……。
 この前なんて「執務室にコタツを設置させるわ!」などと仰っておりましたし。
 ま、イオリ殿への好感度アップというのもありましたけれど。

 ……あら、あんな柱のそばで黄昏ているのは陛下ではありませんか。
 今度は何をしたんですか?

「……ぐすっ」

 え、泣いていらっしゃる?
 リシュリュー閣下に婚約でも押し付けられたとか……?
 でも少し前の謹慎で頭は冷えたみたいですけど。

「陛下? どうなさったのですか?」

「う、うわぁぁああん!! アイリーン……どうしよぉ!」

 こ、これはただ事ではないですね!
 ひとまず何があったのか聞き出さなくては。



 で、結局……。

「イオリ殿の誕生日ですか……」

 呆れたふうに言ってしまうのをお許し下さい。
 でも、あれだけ泣いてて理由がそれって……。

「だ、だってー! 『たん生日プレゼントがほしかったら、セイヤサイでゆうしょうしてみなさい』ってじょうだんで言ったのに――しんじちゃったんだもん!」

 聖夜祭というのはこの国の年末に開かれる、国を挙げた忘年会みたいなものです。
 今年はちょうどイオリ殿の誕生日とかぶっていましたね。
 で、その祭りでは出し物として腕を競い合うトーナメントが開かれるのですが……それにイオリ殿を出場させた、と。
 ――なんだか頭痛くなってきました。
 一般兵は多数参加しますが、近衛兵――しかも専任騎士(シュバリエ)が出るなんて前代未聞ですよ。

「うわーん、イオリのバカ! しょうじきものー!」

「陛下が嘘をついたのがいけないんですよ」

 はぁ……聖夜祭、どうなるんでしょう。