「陛下、本日の予定の『お見合い』というのは……誠なことなのですか?」
「言わないでよ! うわーんっリシュリューのバカー!」
最近何やら動いているとは思ってましたが、まさか強硬手段ですか。
宰相閣下はどこまで本気なのでしょうか。
「まぁ、相手は隣のフェティダ国第三王子らしいですし、相手としては申し分ないのでは?」
「い・や・よ! “セイリャクケッコン”なんてじだいおくれよ!」
フェティダ国と我が国オルドローズ王国は古くから非常に親しい関係にあります。
エリザベート様の祖母にあたるカトリーヌ様も、フェティダ国から嫁がれてきたのです。
そういう関係ですので、本来なら歓迎すべきことなのですが……。
「だいだいあの王子、ことしで30さいじゃない! 24さいもはなれてるわ!」
ええ、まぁ政略結婚ですからこういうことも珍しくはありません。
陛下の年齢がもう少しあれば、ですけど。
流石に6歳と30歳は……世間的にもちょっとキツいのでは。
「こうなったらイジでもことわってくる! 行くわよ、アイリーン!」
「はい」
もう展開が読めてきましたよ。
止められるかしら?
で、お見合い会場に選ばれたのは応接間。
私と陛下が待つこと数分後、例の第三王子がいらっしゃったのですが……。
「(アイリーン、きめたわ。リシュリューはゲンポウよ)」
「(減俸程度なら問題ありません)」
なぜ王子を案内しているのがイオリ殿なのでしょうか。
いえ、まぁ陛下の作戦を阻止するためでしょうけど。
「ご機嫌麗しゅう、エリザベート陛下」
「ご機嫌よう」
流石陛下、先ほど考えたことなど一切出ていないスマイルです。
「本日はお見合いということなのですが、先に申し上げます。今回の話は無かった事にしませんか?」
「へ?」
おや、意外な展開。
「実は我国で謎の病が流行しているのです。そのため今は婚約などをしている余裕もないのです……」
「なんですってっ!? アイリーン!」
「承知いたしました」
なんと、そんなことになっていたとは。
急いで小隊の医療班に伝えに行きましょう。
「王子、わが国オルドローズ王国はフェティダ国を全力でシエンいたします。すぐにじゅんびしてうかがいますので、本日はここまででよろしいでしょうか?」
数ヵ月後、フェティダ国から大量の謝礼品が届きました。
その中でも特に陛下がお気に召されたのが、宝石で作られバラが彫られたペアリング。
誰に差し上げるのでしょうね?