03.間違えた

「ふぁぁああ……ねむたいよぅ」

 時刻は朝の五時前。
 エリザベート女王陛下はひとり、兵士たちが訓練に使う広場へと向かっていた。
 目的はもちろん、シュバリエのイオリに会うためだ。

「ここだもんねー……。まだいないかな?」

 広場には多くの兵士の姿があったが、探し人本人の姿はない。
 エリザベートは、見つかると厄介なため、物陰に身をひそめる。

「(イオリが、来るまで……。ねむぃ……)」

 そのまま、本人も気づかぬうちに夢の世界へと旅立った。





「くしゅんっ!」
「もう、陛下ともあろう方が風邪ひかれるなんて」

 ごめんなさい、と小さく謝るエリザベート。
 あれからしばらくして、彼女を探しに来た兵士たちに無事発見されたのだが、寒い中で眠ってしまった彼女は当然のことながら風邪を引いた。
 ずいぶんと熱も高くなり、侍女たちが付っきりで看病している状態だ。

「イオリ……いなかった」
「イオリさんは今日、お休みですよ。少し前に言っていましたけど?」
「はぅぅ」

 しかもあれだけの思いをして、会いたかった本人は休暇だという。
 彼の休日はまだだと勘違いしていたのだ。

「もう、しっかりお休みくださいね!」
「はーい……」




「(……ぅん?)」

 誰かが自分のそばにいる気配を感じ、目を覚ました。
 といっても熱のためか、ぼんやりとしかわからない。
 けれど――

「(ぁ……イオリ、の手だぁ)」

 少しだけ冷たく感じるそれに、エリザベートは身を任せ、再び眠りについた。