「ふぁぁああ……ねむたいよぅ」
時刻は朝の五時前。
エリザベート女王陛下はひとり、兵士たちが訓練に使う広場へと向かっていた。
目的はもちろん、シュバリエのイオリに会うためだ。
「ここだもんねー……。まだいないかな?」
広場には多くの兵士の姿があったが、探し人本人の姿はない。
エリザベートは、見つかると厄介なため、物陰に身をひそめる。
「(イオリが、来るまで……。ねむぃ……)」
そのまま、本人も気づかぬうちに夢の世界へと旅立った。
「くしゅんっ!」
「もう、陛下ともあろう方が風邪ひかれるなんて」
ごめんなさい、と小さく謝るエリザベート。
あれからしばらくして、彼女を探しに来た兵士たちに無事発見されたのだが、寒い中で眠ってしまった彼女は当然のことながら風邪を引いた。
ずいぶんと熱も高くなり、侍女たちが付っきりで看病している状態だ。
「イオリ……いなかった」
「イオリさんは今日、お休みですよ。少し前に言っていましたけど?」
「はぅぅ」
しかもあれだけの思いをして、会いたかった本人は休暇だという。
彼の休日はまだだと勘違いしていたのだ。
「もう、しっかりお休みくださいね!」
「はーい……」
「(……ぅん?)」
誰かが自分のそばにいる気配を感じ、目を覚ました。
といっても熱のためか、ぼんやりとしかわからない。
けれど――
「(ぁ……イオリ、の手だぁ)」
少しだけ冷たく感じるそれに、エリザベートは身を任せ、再び眠りについた。