目の前のキミが笑う時
「じゃあ、俺をもっと幸せにしてくれ。楽しく――笑えるように」
そんな言葉が、自然と口から零れ出る。
意外だと、自分自身すら思った。らしくないことを言ったと、後悔にも似た気恥ずかしさが込み上げる。でも、何故だか不快感はなくて。それが間違いなく己の本心なのだと突きつけてくる。
常ならたった一言『興味ないね』と、片付けられていたのに。
けれど、それは――きっと。
『花言葉は〝再会〟』
『エアリス。名前、エアリス』
『やったぁ――!』
彼女が、あまりにも嬉しそうに、楽しそうに――幸せそうに、笑うから。
変わった女だった。覆せない第一印象はそのままに、彼女はどんどんコチラに踏み込んできて。その身に纏った花の香りの如く、その眩しい笑顔を振りまいていく。
そう、花のような人だった。気が付けばそっと寄り添ってきて、目を向ければ綻ぶように咲いている。花に興味などなかったのに、どうしてか目を離すことが出来なくなっていて。
そして、気が付いた。
――彼女の笑顔は、見る者の心に色を灯す。
それはまるで、木漏れ日のようにあたたかな色彩。無機質な色使いのこの世界において、彼女の華やかな笑顔は異質であり、同時に救いのよう。その笑みの温もりに自然と心が満たされていく。
己を振り返る。口角が多少上がることはあれど、心から笑ったのは――幸せだと感じたのは、何時が最後だっただろうか。そんなことを考える余裕も無いままここまで来て。
そう。笑顔なんて、幸せなんて感情、とうに忘れていたことにすら自分では気が付かなかった。
だから。
「クラウド、頑張ろうね!」
目の前にいる彼女が素朴で、可憐で、凜とした笑顔を向けてくる。出会って間もないというのに、抱いたこの想いは正しいのかなんてわからないけれど。
もし、自分が心から笑える日が来るのであれば、それは。
「……そう、だな」
叶うのであれば、彼女――エアリスの目の前で、だといい。
素っ気ない態度を気取ってしまう、端から見れば愛想の無い不親切な人間であろうクラウドに対して、咲き誇る美しき花の笑みを一直線に届けてくれる。そんな彼女からの想いに応えてみたい、と。
初めて、クラウドはそう思ったのだ。