花畑
変わった女――それが、クラウドのエアリスへの第一印象だった。
身の丈以上もあるバスターソードを背負ったクラウドに対し、物怖じするどころか自ら進んで声をかけ、ミッドガルでは希少である本物の花をあろうことかタダで渡してきて。もう二度と会うことはない、そう思ったのもつかの間。偶然からの再会の後、気が付けばボディーガードを引き受けていて。
やはり、変わった女だ。花のような微笑みを浮かべながら、するり、とコチラの中へ入り込んできて。手を引いて、導いてくれているような、振り回しているような。決して強引では無いものの、逆らえない何ががある。けれど、不思議と不快ではなくて。
それにしても、エアリスは変わっている。ソレに気が付いたのは。
「……そして、あきらめちゃうの」
らしくない言葉だ――そう、思った。
二人で仕事をこなし、自然と会話を交わし、行動を見て。少なからず彼女に関しては知った矢先のこと。庭先の花畑で見たエアリスは、それまでで築き上げた印象を正反対にする姿をしていた。
見覚えのある黄色い花々に囲まれた場所でしゃがみ込み、まるで花へと耳を傾けているような様子に、ごく普通に〝花としゃべっている〟と認識した。それまでのエアリスの言動からであれば容易に想像がつくことだったから。
けれど、彼女は否定こそしなかったものの、その口調には『諦め』の色が強く滲んでいて。それは、クラウドにとって衝撃的なことであった。まるで常識を根本から否定されたような、それほどの衝撃。
だから。
「そんなふうには、見えない」
つい、否定の言葉を口にしてしまった。エアリスは笑っていたが、やはりどこか今までのものとは違う感情が覗いていて。
エアリスは――変わった女だと、クラウドは強く思った。
荒れた大地に芽吹いた花の如く、芯の強さと綻ぶような笑顔を持っていて。子供達やスラムの住民のみならず、見ず知らずの人間であっても困っていれば自然と手を差し伸べる優しい人で。それでも、彼女は――途方もない何かへの〝諦念〟を、その身に隠し持っている。
どうすれば、彼女が何を諦めているのか知ることができ――そして、彼女が諦めずにすむようになるのか。クラウドにはまだ、分からなかった。
けれど、分からないままでいるのは、なんだかとても苦しくて、辛くて、許せなくて。
思わず視線を、彼女が語りかけていた花畑へと向け、半ば八つ当たりのように呟く。
「返事くらいしてやれ」
もし、花から返事がきたら。エアリスはもう、諦めなくても良くなって。変わった女、という印象がきっと変わって。そして、そしたら――このクラウドの中で燻る、モヤモヤとした想いも、晴れるのだろうか。
その答えはきっと、花たちだけが知っているのだろう。