《声》

【R-18】となっておりますので、未成年の方の閲覧はお控えください


 彼の声はよく目立つ。
 堅苦しげな言葉を朗らかとした口調で和らげ、他でもない自分自身に言い聞かせるように紡がれるその音は、他者では永遠に再現できない珠玉にして無二のもの。
 戦場で相対したとき。互いが異なる地に分かたれている最中。一切の音が響かない、無の黒を湛える宙の海。
 彼の声が聞こえない場所は、ひどく虚しく寂しいと感じるようになったのは何時の日からか。ただの吐息から、こちらの名を呼ぶ声まで。鼓膜を震わすその音色に心を奪われたと自覚したのは最近でも、無意識に求めていたのは――それこそ顔を合わせてしまった頃からだろう。
『――グラハム・エーカー、出撃する!』
 そう高らかに宣言するのを遮るような、無線越しのノイズがもどかしくて仕方が無い。
 恋い焦がれる少女の如く、とまではいかないものの、自分の中に彼の存在が大きく占めていることに気付かされ、密かに頬を薄紅で染める日が続き。
 それを表に、ましてや本人に言う日なんて終ぞ無く――――心中に仕舞い込んだまま、耳を通り抜ける力強き声音を秘めやかに愛そうと思っていた。
 そう、あの日まで。

「刹那、今日はコレを使うぞ!」

 そう言って彼――グラハム・エーカーは無駄に良い声を張り上げながら、何事かと視線を向けた刹那に向かって手にした物をずい、と差し向けた。
 反射的に視線を向ければ、かの左手にしっかりと握られていたのは細長い布状のもの。刹那が好んで身につけることが多いストールよりも細く、グラハムの制服にあるネクタイよりは手軽い印象の、見たとおりただの布きれだった。
 もはや身体に染みついている習慣として、鋭い眼光をつぶさに走らせ見聞するが、これといった特色も危険性も感じ取れず、グラハムの意図が読めない刹那は小首を傾けながら呟いた。
「……今度は何を拗らせた」
「どういう了見だ少年!」
 刹那の発言に衝撃と驚愕を受けたグラハムが喚くが、それを尻目にしながら過去の風景を懐古する。
 そも、グラハム・エーカーという人間は規定外である。学がないと明言する割には聡明で知恵を持ち、生まれ持った直感は他の追随を許さぬ鋭利さで他人の殻を容赦なく見通してしまう。軍人として道理を通す誠実さと、己が抱く子供じみた執念に突き動かされるまま振る舞う嵐のような性質を両立させている。普通の人間の範疇には無いと断言できる。
 そんな彼が意気揚々と目を輝かせながら提案する事項に碌な物がないのは周知の事実。突拍子も無いのは通常運転だが、また良からぬ思いつきでもあったのだろうと推測できる程度には、刹那とグラハムは互いを既に知っていた。
 初めて出会ってから長きにわたり敵対者であった二人がこれほどの関係に至るまでの紆余曲折は隅に置き、未だ文句を垂れ流し続けているグラハムへ刹那は息を零した。
「それで、ソレを何に使う気だ」
 何度見返してもただの細い布にしか映らない、今なおグラハムの手にあるそれを指さす。その声に一旦口を閉じ、しかし好奇心満ちあふれる瞳の輝きは更に増し、グラハムは敵へ名乗りを上げるかの如く宣言した。
「――目隠しプレイだぞ、刹那」
「………………………………は」
 その単語の意味を、刹那の頭脳は理解することをあと少しで拒否するところだった。否、本能としてはとっくに拒絶の意を叫んでいたが、僅かに残った理性が流石に一息で無下にするのは如何なものかと留めたのだ。
 誰彼構わず言うほどのものでは無いが、グラハムと刹那は所謂、そういう関係であった。
 どちらが先に求めたのかは些事であり、互いに合意の上であることを明記しておく。互いに性欲とは無縁――方や機体と空に狂った男、方や戦うことしか出来ない者。まともな関係を築けただけでも奇跡に近い。
 そんな中で特にグラハムは度々、試したがりな面があった。恋人同士の振る舞い方から寝所での攻防に至るまで、それはもう多岐にわたりどこから得たのかも分からない方法を自ら行いたいと刹那を積極的に振り回す。幸い、暴力的なものは間に合っていると――互いに戦場で傷ついた数知れず――平和的で得こそ無いが減るものも無いような小さなことばかりだったために抵抗を覚えたことは無かったのだが。
 今回は、どうも嫌な予感がした。
「もう一度言ってくれ。……何がしたい」
「ふむ、ならばご期待通り言おう――目隠しプレイだ、少年!」
 出来れば気のせいであって欲しい、という刹那の思いを、高らかに宣う言葉がにべもなく否定する。死線を幾度となく潜り抜けてきた頼れる聴力は、残念ながら他の言葉と聞き間違えたりなどしていなかったことに複雑な感情を抱かざるを得ない。
「…………はぁ」
 モヤモヤとした感情を払拭すべく、一先ず大きく息を吐いた。今、初めてグラハムに対して馬鹿だと感じたかもしれない。
「イヤなのか? どうせこの布一枚程度では何も変わらないはずだが」
 そう、本心からだろうムードも何も無いことを言う。
 確かにお互い戦場に身を置く者同士。旧時代とは違い機体越しではあるが、それでも命のやり取りをする故に極限まで鍛えられた身体と神経を持つ。たかが視界を遮られた程度、戦いならいざ知らず、こんな日常の延長線において不便に思うことなどあるはずもなく。
 なら何故やるのかと疑問が浮かぶが、グラハムの表情がすべて物語っている。
 単純に気になるのだろう。本当に視界の利かない中での行為が普段とかにも変わらないのか。
「本当に、お前は……」
 単純で、気になったからにはとことん追求していく。本当に子供のようだ。
 こうなった彼を止めることなど出来ない。元から拒否するつもりはあまりなかったが、どこか今日はヒリヒリとした刺す悪寒故に否定的な態度を取っていたのを切り替え、宙ぶらりんになっていた一本の布をようやく手に取った。
「別に構わない。……目を隠せば良いのか」
「ああ、私が付けよう」
 あっという間に所有者が戻り、手振りで後ろを向くように指示が飛ぶ。やりたいというのなら任せるべきだろうと、素直に刹那は従った。
 程なくしてしゅるり、と目の上を肌触りの良い布地に覆われる。手に持ったときは一瞬過ぎて分からなかったが、素材は中々良いものを使用しているようだ。瞼の上から押さえられるような感覚と、その力強さを調整するように背後で布が擦れる音が響く。ご丁寧に髪の毛を巻き込まないよう慎重にやっているらしい。
「別に気にしなくて良い」
 たいした手入れをしているわけでもなくこだわりがあるわけでもない部位に情けは無用だと告げるが、グラハムにとっては違うらしく大きく拒絶の意を唱えられた。
「互いに万全の体制で挑む、それが礼儀だ」
「…………そうか」
 彼のこだわりは刹那には理解出来そうもないが、好きにさせて困るものでもなく。結局は為すがまま、グラハムが納得のいく出来映えになるまでしばし。
 こうして、刹那の視界は一時的に封じられた。
 映し出されるものはなく、完全な闇ともつかない曖昧な世界が広がっているような錯覚。それでも、磨き上げられた他の感覚が世界自体は何も変わっていないと伝えてくる。
 だから恐れることはない、と。
「……刹那」
 優しい声が己を呼び、それを合図にそっと両肩に手を置かれ緩やかに押し出そうと力が込められる。一瞬の躊躇の後、力に身を任せるまま従えば降下の衝撃を柔らかなスプリングがすべて受け止めてみせた。ハッ、と知らぬ間に緊張をしていた身体から力を抜くように意識的に息を吐く。
 その仕草を受け、グラハムが口角をつり上げたような気配を感じる。確かめることが敵わないのがこの状態の難点だな、と脳裏に言葉が浮かんだ。
 その時。

「さて…………もう、いいか?」

 ――――ゾワリ、と。
 雄大な土台に安心しきった瞬間を突かれ、耳元で囁かれたその声に、刹那は心臓がはじけ飛びそうな衝撃を受けた。
 それは例えるならば、背筋の神経を直接撫でられたかのような。唐突で戦慄的で、そして抗えないほどの歓喜が迸る。
 艶を帯び闇に這う声色は、日照りのような印象を持つ昼間の彼には存在せず、秘めやかな寝所でしか姿を現さない。刹那の他に知る人間がいるのか、と疑問に思ったことはあれど独占したいわけではなく。ただその艶やかな声音に魅せられた者として静かに堪能するのが密かな楽しみで。
 ただそれだけだったのに。
「どうした、刹那」
 たった一言、吐息のように零されたその一欠片の音だけで。
「――――っっ!」
 静かに、されども必死に溢れ出そうな悲鳴を抑え込む。留め金が外れたかのように心臓の鼓動が激しく暴れ出すのを止められない。なにより両耳が拡張したかのように、際限なく周囲の音を拾い上げる。
 自身の鼓動、触れあった箇所が擦れる音、そして互いの高まりあう呼吸音。すべてが、まるで刹那を取り囲むように――否、小さくなった刹那を上から包み込むように奏で合う。
 ふと思い出す。人間は五感の一つを失った場合、それを補おうと残された感覚が鋭敏になると。ならば今の刹那の状態は、視覚を閉ざされた結果、聴覚が通常よりも鋭利となっているのだろうか。
 だとすれば。

 ――これでは、持たない……!

 蠱惑を通り越して暴力的なまでになった彼の声に、刹那は自身の行く末を恐怖した。



***




「――はっ、あ……っ! あぁっ、く……」
 情事が始まってから既にかなりの時間が経過した。働くことを放棄し始めた頭の片隅で、夜とはこんなにも長いものなのかと思い始めた頃。普段であれば力を抜くために敢えて吐き出すようにしていた息が、今日は勝手に喘ぎへと変換される事態へ変わりつつあった。
「ああ、やはり……随分と余裕がないようだな」
「う、るさ……ぃ!」
 耳元で囁かれる一息にすら嬲られている程の感覚を巻き起こす。今刹那はグラハムに後ろから抱えられているような体制で、性器に直接的な刺激は控えめに、身体全体を愛撫され続けている。その間ずっとグラハムの顔が刹那の肩に乗っている状態であり、彼の声は何の防御もとれていない耳へと垂れ流され、まるで麻薬のように脳を直接蕩かす。
「――良い子だ、刹那」
「んぅっ!? ……ゃ、めっあ、ぁう……!」
 彼の声だけではない。ぐちゅり、と品のない音にすら刹那の身体が否が応でも反応を示すようになっていた。
 視界が閉ざされて聴力が敏感になったとはいえ、ここまでの反応が即時に起こることに刹那は疑問を抱くが、それすらも。
「……こら」
「ひっ! ぃ、あぁ……んっ!」
 ぴん、と指先で急所を小突かれた衝撃で吹き飛ぶ。既に高く主張をするソコは、決壊したようにはしたなく涎を零し続けているが、未だにきちんとした昂ぶりを吐き出せていない。それは彼らの情交がまだ前座であることの証左であった。
「しかし、まだ挿れてすらいないのだが……少年、どうやら目隠しがお気に召したのかな?」
 熱っぽく吐息を零しながら、グラハムは挑戦的な口ぶりでわざとらしく刹那の耳元で呟く。それを受け、刹那は必死に首を横に振るが、身体は弾かれたようにびくん、と跳ね上がった。
「……はぁ、っ……ん、ぁぁ……は、やく……っおわらせ……っ!」
 早くこの熱から解放されたくて、刹那は荒く息をしながらグラハムへ催促する。普段では考えられない――許可することはあれど自らねだることは一切なかった――言い草にグラハムは目を瞬かせた。
 ただの愛撫と囁く言葉だけで、刹那の身体は既に流動体になってしまったかの如く、輪郭すら朧気なほど蕩けきっている。このままずっと続いたら本当に耐えられる気がしない、という思いからの言葉だった。
 それを。
「……心得た」
 了承ととれる返事と共に、優しく刹那の身体が寝台へ横たえられる。そのままグラハムの身体がそっとのしかかり、その重みと熱で刹那は、次に始まるであろう行為に安堵する。ここまで来ればあとはいつものように終わるだろうと。
「…………刹那」
「――ぁ、っ!」
 名前を呼ばれただけで足先がひくり、と反応する。それを見たのかグラハムがくすり、と笑みを零した。
 そして。
 角張った指先が秘められた窄まりをノックするように軽く撫で、合図を送る。それに口は返事できずとも身体は素直に、閉じられた場所を緩やかに綻ばせる。その隙を突き、侵入者は慣れた手つきで内部へ。
「ん、くぅ……は、っ!」
 ぐっ、と指先が内部で主張するのを感じ取る。その動きは愛撫と同じく、優しく花々に触れるかのように繊細。未だ瞳を布で覆われたままだからか、普段よりも鋭利になった感覚で指が今どこにいるのかがなんとなく理解出来てしまい、更に体温が上昇するのを止められない。
 そんな中。
「――刹那、分かるか? 君の中に入っているのが」
 そう、再び耳元でグラハムの声がした。茹だるような思考の中、その声だけが脳内でハウリングして神経が勝手にソコへ集中してしまう。
「ふっ、く……な、んで……ぅあ!」
 ぐちゃ、と粘液質の音が鼓膜を侵食する。イヤだとどれだけ首を振っても、一度意識してしまったらどれだけ逸らしてもその場所へ戻ってしまう。
 それを知っていて、更にグラハムは言葉を重ねていく。
「……どんどん呑み込んでいくな。ああ、君の中はよく知っているとも。……このあたり、か」
「――ゃ、やめっ……ひっ! ふ、あぁっ!?」
 ずるり、と何かが内部の弱い部位を掠めたような気配に、身体が過剰に反応を示す。脳の奥がじん、と痺れるような感覚。生理的に流した涙のせいで瞼に張り付く布のせいで視界は真っ暗のはずが、熱に浮かされているためか真っ赤に映る。
「大丈夫だ、そのまま……集中するんだ」
 ぐるぐる、と思考が回転するように同じことしか考えられない。グラハムの言葉通り、自身の内部に意識を集中させる。異物から齎される圧迫感と、出口を求め渦巻く熱源と、それでもなお求めたいと思う欲求に。
 彼の声に導かれるまま、刹那は己の中で起きているであろう状態を脳裏に再生し、その光景に囚われる。それ故気が付かない。グラハムの指先が動きを止めたとこに。
「んっ――は、ぁ……あ!」
 身体と精神、どちらも既に溶けきっており、先の見えない中で縋れるのは聞こえてくる彼の声だけ。だからこそ、刹那は素直にグラハムの言う様に従っていく。
「刹那、気持ちいいか……?」
 その問いに、普段であれば羞恥でにべもなく否定していただろう。だが今ばかりは、そうまるで夢の中にいるような感覚のままこくり、と頷いた。
 それを受けグラハムは刹那に悟られないよう、彼の耳元へ顔を押しつける。唇を耳に入りそうなほどまで近づけて、啄むように。
 そして。

「そうか、ならば――――イけ」

 その低い一言に、刹那は。
「はっ、いっ、っやあ――――っっ!?」
 真っ白い閃光が走る。激しい衝撃と、唐突にも思える開放感。ぴしゃ、と触れられてもいない性器からは白濁が吐き出され、双方の腹を汚していく。
 何が起こったのか、ちかちかと光が瞬く思考では全く捉えきれない。全身の筋肉が痙攣し息も絶え絶えの中、グラハムがにたり、と笑ったような気配だけは分かった。
「刹那、気付いたか? いま君は……私の声だけで逝ってしまったよ」
「…………っは、ぁ――?」
 呆然とする刹那に、グラハムは手を伸ばすと最低限の動きだけでしゅるり、と目隠しを取る。熱い雫を浮かべた眼をそっと開いた刹那に、まるで現実を見せつけるかのようにグラハムは両手を挙げる。
「知らなかったか? 私は先程からあまり刺激を与えていない。無論、挿入すらしてない。……しかし」
 言葉には出さず、結論を刹那自身に導かせる。信じられないと否定しようにも、残念ながら男性として性欲の吐露たるどろどろとした液体がその事実を無様にも肯定する。
「――な、んで……?」
 代わりに無意識から飛び出た疑問に、グラハムは。
「当然、君が私を好きだからだろう?」
 そう言って笑いながら、再び刹那に手を伸ばす。
 まだ夜は長く、秘め事は終わりを知らないとでも言わんばかりに。



***




 翌朝、朝日が昇りきるよりも早く。
 刹那は悲鳴を上げる身体に鞭打つように、全霊を込めて行わなければならないことがあった。据わった目で、すやすやと寝息もたてず眠りこける男を見つめながら、刹那は一切の容赦なく遂行した。
 それは。
「――――――っ!!」
 ほがほが、とくぐもり意味の成さなくなった音を冷たく見下ろしながら、刹那は絶対零度の目線で彼の有様に頷く。
「グラハム・エーカー、しばらく許可なしに口を開くな」
 そう、粘着力に優れたテープを握りしめながら言い放つ。夜の悲劇を受けた刹那による自己防衛だった。
 あれから通常通りの情交が始まったかと思えば、調子に乗ったグラハムの策略で、逝きそうになる度に耳元で艶めいた言葉を囁かれる羽目になった。一度身体が覚えてしまったために、刹那は反射的にそれで反応できるようになっており、それはもう散々だった。最後の方ではただ呼ばれるだけで達する程で。目が覚めてしばらく、寝言のような彼の吐息にもまだ身体がびくつくのを受けて、刹那は決意したのだ。
「~~~~~!!」
「知らん」
 抗議するような仕草をにべもなく切り捨てる。捨てられた子犬のような仕草に決して騙されない、という気概を込めて。
 幸いにも今日は両者ともに一日オフのため、反省しろという意を知らしめるためにこのまま過ごしてもらうつもりだったのだが。
「………………」
「――――……」
 長い沈黙が降りる。
 会えない間は仕方ないとしても、こうして対面できているのに声が聞こえない。この状態が、どうしても。
「………………さみしい、な」
「――――っ!」
 思わず溢れた言葉にグラハムが飛び跳ねる。そうだろう、と目が物語っていた。そして癪に障るが、刹那自身もそう思ってしまったため。
 少し悩んで、諦めの息を吐く。
「……少しなら、いいぞ」
 びり、とテープをひと思いに剥がす。身体に害のない素材のものを使用したため、特に目立つ痕はない。
「しょ、少年……」
 恐る恐るといった風にグラハムが口を開く。ぞくり、と僅かに悪寒がした気がするが、まだ記憶に新しいせいで過剰反応しているだけだろうと振り払う。
 そして、改めて思う。

 ――ああ、確かにこの声は好きだな、と。

 戦地で響く鼓舞の猛り声、胸の内を告白する熱き叫び声、そして――寝所でのみ紡がれる艶やかな囁き声。
 数多の色を放つ声音すべてが、グラハム・エーカーを彩り輝かせるピースであり、刹那が密かに惹かれた要素だと。
 決して口にはしないが、たとえ何があろうともこれだけは決して揺るがないだろう。


「ところでせ――少年! 目隠しプレイ、またやっても良いだろうか!?」
「――――――肺と声帯だけ残して帰れっっっ!!」


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