1. 花の名前

終章 Primula

 ある晴れた日の午後。
 私とアデル様は、とある丘へと赴いていました。
 辺り一面、美しい花で彩られたその丘は、私たちを暖かく迎えてくれているようです。
「ここはな、俺が今まで出会って――別れたティーテレスたちが眠っているんだ」
 ふわっ、と風で花々が揺れていく。
 まるでアデル様の言葉に反応しているかのよう。
「ここはネルケ。こっちはリリー。そこはオーキス。あれは――」
 ぐるりと身体を動かし、ひとつひとつ名前を呼んでいく。
 顔は笑っているけれど、目は……。
「――長生きも、楽じゃないよなぁ」
 そう呟いたアデル様は、とっても悲しそうだった。
 図書館で『人形の騎士』を読み終わった時も思ったけど、やっぱり悲しくて――寂しいんだ。
「アデル様……!」
 叫んだつもりはなかったんだけど、思いのほか声が出て自分でもちょっとびっくり。
 アデル様も驚いた顔をしてる。
 でも、言わなきゃいけない!
「お願いが、あります」
「……なんだ?」
 すぅっ、と大きく息を吸う。

「私も、アデル様と一緒に“生きていたい”!」

「――っ!?」

「何度でも身体を治します。イオンみたいに交換してもいいです! だから――ずっと、ずーっと一緒にいたいです!」

 目を閉じる。
 怒られちゃうかな? それとも嫌われちゃう? どっちも嫌だけど……。
 アデル様が近づいてくる気配がする。
 や、やっぱり――

「はぁ、敵わないな……リムには」
 ぽん、と頭を撫でられると同時に、そんな言葉が頭上から降ってきた。
 え? ど、どういうこと?
「そんなに力説されたら、駄目だって言えないじゃないか……」
 あ……それって。


「ズるいデス!」
「わぁ!?」
 どこから来たの? ニンフェア、イオンも!
「じゃああたしもー! もちろんイー君とセットで!」
「全面的に同意します」
「イラソル、ナナハ……」
 お二人も、いつの間に?
「お前ら……つけてきてたんだな?」
「もっちろん! だってアデル、ここ絶対教えてくれないもん」
「仲間外れ、嫌いデス」
「(コクコク)」
 みんな、考えることは同じみたい。
 でもこれで――
「寂しくないですね、アデル様!」
「ああ。騒がしいぐらいだな」
 そう言って、まるで満開の花のようにみんなで笑いあいました。ずっと、ずーっと――――





おしまい




page top