14.甘い毒

「ねぇ、アイリーン」
「なんでしょうか、陛下」

 いつもの執務室ではなく、謁見の間で王座に腰掛けていらっしゃるは、我が国が誇る若き女王陛下エリザベート様。
 六歳という異例の早さで即位をなされた陛下は、既に諸外国の王族達にも決して劣ることのない気品さ、さらに幼さと美しさが調和したご自慢の美貌で、国内外を問わず人気であらせられます。
 そんなエリザベート様のすぐそばに山のように積み上げられているのは、チョコレートをはじめとした菓子や贈り物の数々。
 本日はバレンタインデー。女性が意中の男性へチョコレートを贈る日、というのが一般的ですが、最近は男女や恋心を問わずプレゼントをする日という印象になってきておりまして。そのため、数年前よりこのように陛下宛てに山のように届けられているのです。
 お優しい陛下ですので「全て食べるわ!」と言って聞かなかったこともありましたが、健康とあまりの数の多さに断念。いまでは厳選されたごく僅かを一口食べるだけに留まっています。
 しかし、今年は少しばかり量を増やし、しかもあえて男性からの贈り物に拘って選ばれたものを、まるで見せびらかすかのように謁見の間でお食べになっています。
 ……誰に? もちろん、あのお方に向けてなのですが。

「イオリは、どこなのよぉおおお!!」

 肝心の彼の姿がございませんね……。
 まぁ、彼の容姿と性格などを踏まえると、何処かで捕まっていると考えるのが普通ですが、そんなこと言ったら火に油を注ぐようなものですので黙秘します。
「しんっじらんない! これだけドウドウとやってるんだからシットしてもいいと思わない!?」
「その、大変申し上げにくいのですが……両想い前提はいかがなものかと」
「イオリのバァカアアッ!」



 ……部屋に戻ってきた。
 口の中いっぱいに広がるのはバラの香りと甘ったるいチョコの味。ちょっと遠いとこにある国の名さんで、わたしがバラ好きだからってくれたもの。美味しいけれど、ずっと食べ続けるには向いていないわ。やけ食いしたかったけど、あれ以上はアイリーンに止められちゃったし、わたしもムリだとわかっていたからやらなかった。
「イオリの、バーカ」
 帰ってくるまでなんどもつぶやいた。ホント、なにをしてるのかしら? わたしのシュバリエなんだから、そばについてるのがふつうなのに!

「……陛下、いらっしゃいますか?」
「いるわよ――――って、イオリっ!?」

 ぼーっとしながら応えたら、うわさの本人がきてた。手に持ってるのはティーセットが乗ったトレー。騎士のかっこうなのに、みょうに似合っててヘンな感じ。
「お茶を淹れてみました。いかがでしょうか」
「お、おねがいするわっ!」
 イオリがお茶をいれてくれるなんて!
 ちょっとなれてないてつきでティーカップに色のこいものを注いでいく。いつも飲んでるものにくらべたら香りがずいぶんひかえめね。ちょっとむらしすぎじゃないかしら? でも、せっかくイオリがいれてくれたんだもの。ぜんぶ飲んでみせるわ!
 とりあえず、ひとくち……。
「あ――――」
 すこししぶいぐらいのこさ。けれど、口にのこっていた甘ったるさがいいかんじにとけあって、とても飲みやすい。ひかえめな香りのおかげでチョコについていたバラの香りがいっそうきわだっている。
「すごい……いま一番飲みたかったお茶よ」
「本当ですか? それはよかった」
 そう言って、ニッコリと笑ったイオリ。
 おもわず目をそらしてしまう。だって――――

「(カッコよすぎよ……イオリの、ばか)」


せっかくのバレンタインなので、チョコレート代わりに皆さんに贈ります!
いつものエリザベートより、少しばかり年を上げて書いてみました。
恋愛ものっぽくなっているでしょうか?(笑)