心蝕グランギニョル


 物語は、語り部によって自由に書き換えられる。

「どうしてっ! どうしてこんなことに――!!」

 少女の慟哭が響く。目の前には、彼女が愛し愛されてきた両親の成れの果てが無造作に転がっていた。それだけではない。周囲には他にも人間だったものが散乱している。彼女の親よりも悲惨な遺体も多かった。顔だけではない。人の形をも留めていないものすらもある。
「おかしいよ……だって、本当なら」
 涙を流しながら、少女は現状に疑惑を抱いた。

 ――本来ならば、彼女の物語は全く違うストーリーを描くはずだった。
 貧しくも病に伏せる両親を養いながら懸命に働き続けた彼女のもとに救いの主たる『王子様』が登場し、彼女と心通わせ幸せな人生を送った……それが筋書きだった。

 だが。

『だってさ、君の物語……つまんないじゃん』
「――――え?」
 虚空から声がした。
 男の声。だが、少年なのか青年なのか、もしかしたら老人なのかもしれない。そんな不思議な声は、明らかな悪意と好奇心に満ちていた。
『王子様と結婚してめでたしめでたし。……でも、それってつまらないよね。だからもっと面白そうな話にしてあげたよ』
 なにを言ってるのか少女には理解できなかった。
「なによ、それ……。面白いはなし? これのどこが――!?」
 業火が風に巻き上げられ村を飲み込んでいく。気づいたときにはもう遅く、両親の姿は紅蓮の中に掻き消えた。
 親も、家も、村も、友達も、思い出すら蝕まれていく。これのどこが“喜劇”なのだ。
『君、わかってないねぇ』
 心底馬鹿にした声が脳内で鳴り響く。

『人ってさ“喜劇”はすぐ飽きちゃうけど、“悲劇”はいくらでも楽しめるんだよ。他人の話なら尚更さ!』
シキさんへ。申し訳ありませんでしたー!(土下座
でも、心を蝕む恐怖劇……なんて素敵なタイトルなんでしょう。
すごく書くの楽しかったし、今回の中で一番書きやすかったです!(笑