草まくら


「さぁ、今日はどこへ行こうか?」
 当て所もない自由な旅。お供は古びた童話集と草花の種がたくさん。そして――


「旅人さん、そんなところでなにをしてるんですか?」

 仄かに暖かい春風に運ばれてくるのは、そろそろ見頃をむかえる花々の濃厚な香り。空から降り注ぐ日光が心地よく、僕は草原で大胆に寝転んでいた。
 近隣の村に住む子だろうか。つる草で編まれた小さいカゴに食べられる山菜をたくさん詰め込んでいた少女が、こちらを不思議そうに覗き込んできた。
「ん? お昼寝さ。これだけ暖かくて気持ちいいと、ついつい眠くなっちゃうんだよ」
 クスリと笑いながら、頭は自作の枕に預けられたまま。昔は、ぎっしり詰め込んだカバンを枕にしていたけど、アレは少し硬すぎた。あとすごく重い。
 いっそ何も持たない方が楽だろうと、最低限の荷物だけ残して処分して数年。いまではそのあたりに生い茂る草を編み込んで枕にしている。数日でくたびれるが、その度に新たな枕を作る。前の草まくらは地に返す。もしかしたら、そこからまた芽を出してくるかもしれないな。植物は強いから。
「えー、わたし旅人さんのおはなし聞きたいなぁ」
「ははっ、嬉しいね。でも僕は話すのが苦手なんだ。だから……」
 残念そうに俯く彼女に、僕はとっておきの種を差し出した。
「これは?」
「何かの花の種さ。ここにもたくさん綺麗な花が咲いているけど、これもきっと素敵な花になってくれるよ。どんな姿になるかは君しだい。……僕の話なんかより、ずっと面白いと思わないかい?」
 目を輝かせる少女に、僕も嬉しくて微笑んだ。
 だけど眠気はさめてしまって、少しばかり残念に思ったのは秘密。ああ、この枕もそろそろお別れかな。
「そうだ。いまから草でまくらを編もうと思うんだけど、君もどうだい?」
「…………はい!」

旅人さんへ。旅と草の枕、どちらの意味も込めて書いてみました。
……が、旅の要素少なすぎますねこれ(汗 あと草で編んだ枕の寝ごごちってどうなんでしょうか。
拙いものですが、よかったら貰っていただけると嬉しいです。