とある鉄の人形のおはなし


 むかしむかし、あるところに小さな王国がありました。
 大きな山を背にしたその国は、その山から取れる固くて強い石が自慢でした。
 その石は【鉄】と名付けられ、その王国もいつの日か【鉄の国】と呼ばれるようになりました。

 ある時のことです。
 鉄の国の姫君が王様にお願い事をしました。
「お父様、私……お友達がほしいわ」
 王様はすぐその願いを叶えようとしましたが、困りました。
 鉄の国には姫君と同じ年頃の人間がいなかったのです。みな、大きくて強い人たちばかりでした。
 そんな人とは友達にはなれないだろうと王様は悩みました。

 そんな時、遠くにある小さな国から不思議な人がやってきました。
 その人物は自分のことを『人形師』と名乗り、姫君に優しく言いました。
「私が、あなたに素敵な友人を作って差し上げましょう」
 人形師は鉄をたくさん持って、何日も何日も部屋にこもりました。
 そして、彼が部屋から出てきたとき、すぐ横には【鉄の人形】が立っていたのです。
「姫君、この子があなたの友人となってくださいますよ。ともに笑い、ともに泣き、ともに悩み、ともに歩んでくれる……そんな素敵な友に」
 姫君は大喜びで鉄の人形の手を握りました。
 冷たくて固くて少し怖い、人とは大違いのその姿。でも姫君は構いませんでした。
「あなたが私のお友達ね! さぁ一緒にダンスを踊りましょう」
 ギシギシと鉄同士がぶつかって耳障りな音を立てました。ガチガチに固まった足では上手くステップも踏めません。鉄の人形はすぐに転んでしまいました。
「大丈夫よ。何度でもやってみましょう」
 姫君は何度も鉄の人形を起こし、その度にダンスへ誘いました。
 何日も何日も、二人は一緒にダンスを踊りました。
 あるとき、今日も一緒にダンスを踊ろうと姫君の元へ行こうとしました。けれど、何故か大勢の人間が道を塞いでいて通れません。
 人々は大きな声で話し合っていました。

「姫君は流行りの病にかかられた」
「薬は効かない。どうすればよいのだ」

 人形は驚きました。
 いつもあんなにも楽しそうに笑っていた姫君が、そんな病に倒れてしまっただなんて。
 人々の話は続いていきました。そして。

「あの人形のせいじゃないのか。あれと遊ぶようになってから、姫君の身体は弱くなってしまった」

 大臣の一人が言い出したその言葉に、皆が口を揃えて「そうだ!」と言い始めたのです。
 鉄の人形は「違う」と首を何度も横に振りましたが、誰もそれを見ようとはせず、ついにはお城から追い出されてしまいました。

 途方に暮れた鉄の人形は、ギシギシと鉄を鳴らしながら、歩いていきます。
 もう姫君には会えないのか。
 そう思ったとき。ふと上を見上げると、城のある部屋の窓が開かれていました。
 豪華で可愛らしいその部屋は、姫君のお部屋でした。
 ベットで臥せっていらっしゃるのでしょう、姫君のお姿は見えません。
 けれど鉄の人形は思いました。

 ここで、これからはダンスの練習をしよう。

 ここなら、姫君に見てもらえるかもしれない。姫君の病が治ったらすぐにわかる。
 そう考えると鉄の人形は、いつものように――けれど今日からはひとりきりで――ダンスの練習を始めました。

 雨の日も風の日も、人々に馬鹿にされても、こけて身動きができなくなっても、鉄の人形は踊り続けました。
 起こしてくれる人、支えてくれる人、間違いを直してくれる人……そんな人はだれもいません。
 それでも鉄の人形は踊り続けました。
 いつの日か、姫君の病が治ったとき、あの日の言葉を守るために。

『あなたが私のお友達ね! さぁ一緒にダンスを踊りましょう』

 姫君と一緒に、素敵なダンスを踊るために。



 太陽が何度も登っては沈んでいきました。
「私の友達は、どこに行ってしまったの?」
 病がようやく治り、姫君は窓の外を見ました。
 そこには――――


 誰よりも美しくダンスを踊る鉄の人形が、姫君へ手を差し出していました。


こんなんフリーにしてどうすんじゃあああ!! と突っ込まれそうな代物その1
とある作品……ぶっちゃけ『花の名前』の世界で親しまれている童話のひとつです。
鉄の人形とありますが、ブリキ人形よりはロボットに近い外見をしてます(背景は突っ込むな!
誰が造ったのか……例の人です。イタズラ心満載のおばあ様(笑)
あ、ということはこの子はアデルの兄弟みたいなものですね。