Fenestrula


「ねぇ、お父様。あの窓の向こうには何があるの?」
「……とても恐ろしい怪物や人間が沢山いて、我々を滅ぼそうとしてくる世界が広がっている。いい子だから、決して何があってもあの窓を開けてはいけないよ」
「はい」

 それが、幼き頃交わした、父との約束。


 私の世界は、硬い石によって積み上げられた大きなお城だけだった。
 共に暮らすのは優しい父とごくわずかな使用人たちだけ。
 狭いけれど平穏が約束されたこの場所は、私にとって幸せの象徴だ。
 父は口癖のように言っていた。
「外の世界なんて気にしてはいけないよ。お前はここで清く健やかに生きていればそれでいい」
 少し前まではそれでよかった。
 けれど、私ももう十二歳。
 そろそろこの城には飽きてきた。
 私の部屋にはたくさんの本があった。そこにはこの城にはない、外の世界にあるという様々なもののことが事細かく記されている。
 本当に、それらはこの城の外にあるのだろうか?
 私の興味は尽きることがない。
 そんな時だ。
 何となく夜眠れなくて、私は城の中を記憶だけを頼りに歩いていた。
 明かりはつけない。つければ父が気づいてしまう。そうなれば私は部屋へ戻されてしまうだろう。
 それは勿体無い。こんなチャンス、そうはないのだから。
 素足で暗闇を駆け抜ける。目指す場所はただ一つ。

 ――――この城の中で唯一、外の世界を覗き見ることができる場所へ。

 初めて、私は父の言いつけを破った。
「…………わぁ」
 口から勝手に漏れ出たのは感激の吐息。
 ふわりと揺れ踊る草木。頭上から銀の光で照らす月。瑠璃色にきらめく湖。静かに、そして優しく微睡む大地。
 みんな、初めて見るものだった。
 もっと見たい。もっと触れたい。もっと知りたい――!
 その思いが身体を動かし、禁じられた窓へ手をかけた。
潤さんへ。なんだかぶった切りで申し訳ないです。
おそらくサイト名はラテン語で『窓・小窓』だろうと勝手に解釈し、結果こんな感じになりました。
間違ってたらすぐ仰ってください! 書き直し覚悟です!